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尊厳City研究所 大川ともゆきのブログ

ドラッカーが投げかけた人類の宿命的課題

第二次大戦のさなか、戦争遂行能力を損なうことを恐れて炭坑ストライキの回避を呼びかけたフランクリン・ルーズヴェルト大統領に対し、当時の労働組合指導者ジョン・L・ルイスがこう答えた。

「大統領は国のために働く。私は炭鉱労働者のために働く」

有名な経営学ピーター・ドラッカーは彼の著書「ネクストソサエティ」の中で、上記の言葉の引用とともに、以下の言葉を残しています。

「これから始まる新たな1000年、あるいは100年における我々に課された最大の課題が、諸々の組織の自立性を保ちつつ、しかもグローバル企業にあっては主権国家の管轄さえ超えた自立性を保ちつつ、今日では戦時以外は失われてしまった社会の一体性をいかにして回復するかである。とはいえ、我々は今のところ願うことしかできない。我々は、いかにそれをなすべきかを知らない。」

ドラッカーは、今までの人類歴史を記述し、各組織の自立性と社会の利益を同時に満たすことは非常に困難であることを明示した上で、それでもなお、我々人類が解決しなければならない最大の課題がそれであるとしているのです。

全体の利益と部分の自立性とは往々にして相反するものです。
上記の例で言えば、大統領には大統領の観点があり、炭鉱労働者には炭鉱労働者の観点があります。
全体を見る観点を持つ大統領は当然、全体の事を考えた意思決定をしますが、部分の組織である労働組合の観点からは、自らの利益を最優先した意思決定をします。
誰もがそれぞれの観点に固定したところから意思決定し、そして、いつの時代も闘争が終わることはありません。

さて、この問題をあなたならどう解決しますか?
どうしたら闘争の歴史を終わらせることができ、個人も組織も全体もwin-winの関係になれるAll-winの世の中を創り出すことができるのでしょうか?

これからの100年、1000年において、私たちが解決しなければならない最大の問題が、この観点の問題なのです。

①皆、観点を持っている
②観点は皆バラバラなので闘争が終わらない
③無理やり一緒にしてもファシズム、ロボットのようになる
④あらゆる観点は不完全
⑤にも関わらず、皆自分の観点を絶対視し、その観点に固定されている

この問題は、どれだけ科学技術が発達しようと、組織、制度、システムを改革しようと解決できる問題ではありません。なぜならば、私たち人間自身の問題だからです。
つまり、観点の問題を解決するには、私たち人間が変わる以外にないのです。

人間を形作るものは教育です。何かと政治や経済ばかりが取り沙汰される昨今ですが、
「観点の問題をどう解決するのか?」
を中心テーマとした教育改革の議論が今、最も必要とされることではないでしょうか。
ドラッカーが生きていたら、きっと同意してくれるものと思います。