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尊厳City研究所 大川ともゆきのブログ

21世紀活躍できる企業の条件

九州の熊本に黒川温泉という小さな山間の温泉地があります。交通の便が決してよいとはいえない山奥にあるのですが、毎年人気温泉地の上位にランクインされ、アジアからも旅行客が殺到する日本屈指の温泉地なのです。なぜこれほどまでに人気が出たかと言いますと、温泉旅館同士の連携プレーが背景にあるのです。
昔、存亡の危機に喘いでいた黒川温泉は、温泉街の仲間たちが結束し、黒川のすべての露天風呂が利用できる入湯手形を発行しました。それがブランドとなって危機を脱することができた後、さらに「黒川温泉一旅館」というビジョンを掲げ、街づくり協定をつくったのです。
街全部が一つの旅館という考え方で、黒川温泉は一軒の繁盛旅館を生むよりも、「街全体が一つの宿、通りは廊下、旅館は客室」と見立て、ともに反映していこうという独自の理念を定着させたのです。
全体の繁栄があってこそ個が生きるという理念のもと、全体として質の高いサービスを維持し続け、一躍人気温泉地に躍り出ることになり、結果的に各旅館の売上が増大していったわけです。

このように、個ではなく全体を自分として捉えることで、Win-Win、All-Winをつくり出すことが可能になります。しかし、実際こういうケースはごく稀です。
仮にこのような理想を掲げることができたとしても、全体の利益よりも個の利益を優先するために裏切る輩が出てくるなど、実際に成功することは難しいのです。
しかし、貧富の格差が開き、大企業と中小零細企業の格差もかつて無いほど開いている今の時代は、個人も企業も単独で頑張るには限界があります。
21世紀は関係性の時代ですから、個ではなくいかに関係性を大切にし、共通のVISIONに向かって協力体制をつくれるかが重要なのです。
ですから、特に中小企業は今まで敵だと思っていた同業他社に対するイメージの固定を破壊することです。そして、観点を広げて観た時に、共に業界を活性化していく仲間として観ることができます。
その視点に立つと、
「いかにして同業他者を出し抜くか?」
ではなく、黒川温泉の事例のように
「どうすれば同業他社とチームプレーを組んで、目覚ましい成果を上げられるのか」
というように質問が変わるはずです。

質問が変わることで生み出される問題解決のアイデアも変わり、アイデアが変わるから結果も変わります。
ですから根本的に自社と他社を切り離すような企業アイデンティティでは、これからの時代、生き残ることは出来ません。
それこそ同業者共同体などをつくって、どうすれば全体の底上げをすることができるかを議論するようにすべきだと思います。
ただ、企業は日々の競争に追われ、なかなかその発想にいかないですし、仮にイメージがあっても実践に移すことは簡単ではないでしょう。
そこで、一つ高い視点から行政がフォローして、組合をつくるなどの取り組みも必要だと思います。
しかし、何よりも経営者が自他を分けないアイデンティティになることが大事ですし、社員や取引先などとも裏切らない関係性を築けるようになることが、これからの経営者の必須条件となるでしょう。そのような教育に力を入れる企業が21世紀に活躍できる企業であると思います。